甲状腺機能障害には、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)と橋本病(甲状腺機能低下症)、甲状腺腫、甲状腺炎があります。
ここでは相談の多いバセドウ病と橋本病について簡単に解説します。
バセドウ病は、自己の甲状腺(特に甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体)を異物とみなし自己抗体(TSAb)をつくてしまい、甲状腺ホルモンが過剰に作られ、結果として甲状腺機能が亢進する病気です。
などの症状が出てきて、食欲はあって食べるにもかかわらず体重は減少します。
(代謝亢進以上に食べれば体重変動なかったり、太ることもあります。)
甲状腺は蝶の形がわかるほど大きくなる場合もありますが、ほとんど触れない方もいます。
甲状腺刺激抗体が眼の後ろにある筋肉や脂肪にも働いて、炎症やむくみを起こし、眼の飛び出すこと(眼球突出)もあります。
これは、バセドウ病の患者さんの約30%で認められます。
ひどい場合には、眼の動きが悪くなってものが二重に見えたり、白目(結膜)が充血します。
病院での血液検査で、
①甲状腺ホルモン(T3、T4)が上昇、
②甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低い、
③甲状腺刺激抗体(抗TSH受容体抗体:TRAbまたはTSAb)が陽性、
の3つがあればバセドウ病と診断されます。
一般検査では、肝機能異常(GOT, GPT、ALPなどの上昇)、総コレステロールの低下、白血球の減少などが見られます。
このような検査結果から、肝臓の病気と間違えることが時々見受けられます。
治療は、薬物療法、放射線、手術があります。
薬物療法では、メルカゾールやチウラジールによって甲状腺ホルモンをコントロールして、1年半~2年で約45%の人が自然治癒します。
しかし2年経っても正常化しないと手術又はアイソトープを勧められます。
橋本病のようにヨード制限はありません。
バセドウ病眼症は、まずは血液中の甲状腺ホルモン値を正常化させ、炎症があれば、入院してステロイドパルス療法を行います。
目の裏の炎症を急激に鎮めた後、放射線をあてて炎症が再発しないようにする必要があります。
その後、少量のステロイドホルモン剤を内服します。
ただし、外眼筋の炎症がすでに鎮まっている場合にはこのような治療は無効です。
炎症が鎮まっているにも関わらず複視や視力低下があったり、眼球突出や閉眼困難による障害がある場合は眼科手術を考慮されます。
慢性甲状腺炎とも呼ばれる病気で、日本人の女性に多く、40歳代以降の女性では13人に1人がこの病気であるとの調査結果があります。
甲状腺に対する抗体ができて、甲状腺が破壊される病気です。
橋本病の2割程度の方が、甲状腺が破壊されて貯蔵されている甲状腺ホルモンが少なくなるために、甲状腺機能低下症となります。
ですから、残り8割の方では甲状腺機能は正常に保たれます。
バセドウ病と同様に甲状腺全体が腫れますが、バセドウ病に比べて甲状腺は硬いのが特徴です。
甲状腺ホルモンが低下すると、
などの症状がでてきます。
病院で検査して、
①甲状腺に対する抗体(抗サイログロブリン抗体(TgAb)、
②抗サイロペルオキシダーゼ抗体(TPOAb))が陽性だと橋本病、
加えて
③甲状腺ホルモン(T3, T4)の低下、
④甲状腺刺激ホルモン(TSH)の高値
が認められれば、甲状腺機能低下症と診断されます。
一般検査では、
総コレステロールの高値、肝臓・筋肉の酵素(GOT、LDH、CKなど)の上昇がみられます。
脂質異常症の方で甲状腺機能低下が隠れていることがあるので注意が必要です。
橋本病の経過中に急激に甲状腺の細胞が破壊されると、蓄えられていたホルモンが一度に血中に出てくるため、甲状腺ホルモンが過剰(中毒症)になることがあります。
微熱、動悸、手のふるえ、体重減少などバセドウ病に似た症状が認められます。
甲状腺に痛みがないので無痛性甲状腺炎と呼ばれます。
治療は機能低下症になっていれば、
薬物療法で甲状腺ホルモン(チラーヂンS)を補います。
補充療法だけでは根本的には治癒しないため、一生毎日薬を飲み続けます。
FT3・FT4・TSHが正常な人の場合は、薬の必要はないとされていますがいずれ甲状腺の動きが低下して、甲状腺ホルモンが不足する可能性も多いとされています。
甲状腺が腫大し、喉に違和感がある人 はチラーヂンSを服用し様子をみますが、大きくなって気管を圧迫する時は手術が必要な場合があります。
また、バセドウ病と異なりヨード制限が必要です。
ヨードを摂り過ぎると甲状腺ホルモンが低下しますので制限を受けます。
海藻類を控えるようなるのですが、特にコンブには注意してください。
食べるだけでなく、コンブでだしをとることも避けたほうがいいです。
ただし、のり、わかめなどの海藻類はヨードの量も少なく、たくさんの量を食べるわけではないので、それほど神経質になる必要はありません。
甲状腺機能異常は免疫の異常で起きています。
(バセドウ病・橋本病は自己免疫疾患です。)
ですから、免疫の狂いを正していくことが必要だと考えています。
免疫の狂いによって作られすぎた自己抗体を処理することが大切です。
つまり、T3・T4・TSHの改善だけではなく根本治療として自己抗体の正常化を目指します。
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